コラム

ビジネス最前線

第05回 「ベンチャーとハングリー精神」

この年末年始は、ベンチャー起業家同士にK-1やプライドなど格闘技大会の行方が共通する話題となり、よく一席10万円以上の席でも買って観戦に行っている。

極真会館の館長直々に空手を習うベンチャーグループもあれば、ボクシングを、試合出場を目指して真剣にトレーニングしている者もいる。体を鍛える事以上に集中力など精神面の向上を目的としているようである。ベンチャー起業家は毎日が選択肢の決断の連続であり、ひとつ間違えると財務も人材体制も崩壊してしまう事をよく知っている。

関西中心に年商100億以上の総合塗装リフォーム業の(株)オンテックスの小笹公也社長は中学を出てからプロのボクサーだった。それはもう20年以上前の事だが、ただボクサーでは生活が出来ない為、親方についてハケを持ち塗装のアルバイトを始めた。ボクシングで鍛えた集中力で仕事のレベルを上げ他の人の3倍の仕事をこなしたという。命綱なしでビルの7階位の所から落ちたこともあるそうだが、その後独立して今の1000人規模の会社を作り上げたベンチャーだ。

会社が大きくなりかけても下請けの苦難で資金繰りの危機状態など、ふり返れば事業でいろいろ苦労をしたようだが、今でも「何があろうと当時のボクサー修行の苦しさとは比べものにはならない。」と言う。目標の為にハードな練習や減量などボクサーの日々の鍛錬は、ベンチャーとしての全ての基礎になったのであろう。

「もっと、こんな仕事をこなし、人材を集め、事業を広げ、こういう会社になりたい。」と貪欲に願う限り成長は止まらないのである。その後大検を受け、大学生と実業家の両方をこなし、アメリカで業界での博士号を修得している。

ベンチャーはボクサーのように次の試合をより強い相手にチャレンジしようとするハングリーな格闘家である。また、人間は自分が成りたい「イメージ像」というプライドが仕事と自分レベルを落としたくなくなり向上することに貪欲になる。

東証1部に新記録の37才で上場した総合ボウリング場経営の(株)ラウンドワン杉野公彦社長は、学生時代にローラースケート場の管理人のアルバイト中、あまりにも客が来ないことからアイデアを出し、中古の卓球台やビリヤード台を置き、ついには自分で親に2000万円の事業資金を借りて中古ボウリングレーンを数個買ってきてスタートした。その時、業者から「君の所は、おもちゃのボウリングだな。」と言われたのが今でもハングリーパワーになっているという。「いつか『おもちゃ』と言わせない日本一のボウリング場になってやる」・・・と心に決め20数年、今では全国40店舗を越え、年商450億以上で経常利益はこの2年は80億、そして今期は130億予想である。1店舗年商1億というボウリング業界の売り上げレベルの常識を越え、最近新設の1店舗は年商15億で経常利益6億の総合レジャー施設となっている。

それでも、先日、本人に会って話を聞くと、今でも昔の苦労がトラウマのように妄想となってよみがえるという。

シャッターを開けた時から客が一人も来ない夢だとか・・・実際、当時2店舗目のボウリング場を開店しようと、いわゆる居抜きの閉鎖されたボウリング場を見に行った時、ハトの死体だらけだったらしい。奥歯をかみしめて掃除から始めたその時の思いがあればこそ、その後のどんな苦労も乗りこえられたのだろう。

今の目標は、ディズニーランドを越える経常利益なのだそうだ。
「ハングリー」「集中力」「プライド」の精神は、人間の潜在能力を呼び起こし、継続させ、多くの仲間を共感させて思いも寄らぬステージに自身を運んでいく。

あの時の口惜しさや苦労が無かったら・・あの出来事やこの自分の精神力は無いと言えるものを持っているからこそベンチャーなのかもしれない。

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