コラム

ビジネス最前線

第13回 「ベンチャーと上海 その2」

長崎県の五島列島出身で、大阪で起業した久保敏志社長率いる株式会社エスケイジャパンは、中国のおかげで創業約15年で東証一部上場を果たした。エスケイジャパンは中国の工場―つまり、安い人件費と細かい事が得意な技術力のおかげで、あのドラえもん、くまのプーさん、キティちゃんなどのぬいぐるみやキーホルダーを作って日本のアミューズメントに特化して販売し成功をおさめてきた。なんと、ぬいぐるみなどのゲームセンター景品が中心で年商100億企業になった製造ベンチャーである。

その久保社長と一緒に、現地視察の一環で上海のアミューズメント施設を回った。街の中心の大きな百貨店の上層階を2階分も占めているゲームセンターは、ジェットコースターやアドベンチャーアトラクションの乗り物がビル内の中心の吹き抜けにあるなど規模が大きくて驚いた。乗り物代金やゲーム代、日本で流行っているムシキングの中国語カードゲーム機の料金も日本並みであった。ここは日本資本で大手のアミューズメントを展開してきたセガ・エンタープライズの施設だった。

次に、上海に進出したというアミューズメント施設のJJclubを訪ねてみた。

JJclubはベンチャー企業で東証マザーズに上場している株式会社ネクストジャパンが運営する15分100円の課金制で、ボーリングからビリヤード、カラオケ、卓球、釣堀、アーケードゲームなど数十種類が遊び放題の施設を日本全国に展開している。この三年くらいで急激に成長した注目されているビジネスモデルだ。

さて、オープンして間が無いという上海JJclubの話を現地の旅行会社の若い社員に聞くと、すぐに「これですね」と会員証が出てきたので驚いた。すでに若者には人気があり定着しているらしい。私は日本で生まれて5年程で、中国でインフラしようとしているベンチャー事業があることに感心した。

早速、タクシーに乗り、少し郊外にある有名な上海雑技団常設の大きなドームの隣のきれいなビルに大きな看板で多くの遊びの内容を宣伝しているJJclub上海を訪ねた。ビル内の3階フロアーを独占して各箇所に多くの遊び施設があり、ぬいぐるみ取り放題のUFOキャッチャーなど工夫をこらしていた。しかし、一番驚いたのは料金設定で、日本よりも高いのである。日本なら15分間100円だから1時間遊んで一人420円であるのに対してここは450円位であった。日本と比べて賃金格差は10分の1位にもかかわらず、この値段設定をしている。日本に帰ってネクストジャパンの長江社長に直接話を聞くと、別に富裕層狙いでもないらしいから驚いた。見学していたのは土曜日の朝だが、若いカップルが次々に入って来た。1時間でカップルは約900円を支払うのである。週末はかなりの売り上げがあり、伸びているそうだ。

次に街を離れて、少し郊外の古いボーリング場に行ってみた。日本のお下がりのボーリング施設のようで、おせじにもきれい遊び場といえないし、若者のデートスポットでもなく暗く汚い施設であった。ゲーム代は1ゲーム40円位であるが、朝から中高年で満員であった。経済的にも余裕が要る新しい価値観商品の「娯楽」を買う上海人をウオッチングしてきた。

上海のタクシー代金は普通で20〜30分乗っても300円くらいである。

次に少し街から離れてタクシーで約30分、これも最近出来たという株式会社シーアンドシープロの2000坪の自社工場を訪ねた。シーアンドシープロは安東正志社長が創業で10年目位、日本の多くの飲食店や会社、ホテルなどの内装を安く、デザイン良く、新しい仕組みで伸ばして上場へ向かっている優良ベンチャーだ。大手のファミリーレストラン出店の内装代金を従来の半分位にしてきた実績もある。その答えがここにあった。今、日本で普通に見かけるオシャレなアジアン家具や店舗用のデザインテーブル、イス、電子看板から大型ポスター調のぼりまで、約200人の職人が専門職場で一生懸命働いて作っている。イスに皮を張る者や木を流線型に切る者、金属を切ってつなぎ合わせる職人など私には凄いスペシャリストに見えた。日本の新感覚の居酒屋店舗によくあるレトロ調の家具などの製造過程を見せてもらった。

しかし、職人の給料は月1万円くらいで雇っているという。200人雇用で月200万円の人件費、しかも、素晴らしい商品が次々と出来上がっていく。輸送費や納品期限などの問題はあるにせよ、商品に人件費が重く乗らない魅力を目の当たりにした。いい本皮のデスクチェアーなども値段を聞いてみると驚くほど安い。

日当が約400円で技術を駆使して働いているこの工場の人たちもいれば、街にはJJclubで1時間900円を使う若い消費者も普通に生活している上海―そして、それを仕掛けているのが日本のベンチャー企業という構造はまだまだ進化し続けるようだ。

上海は日本のベンチャー企業にとって友好的ベンチャーパートナー都市であった。

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