コラム

ビジネス最前線

第15回 「ベンチャーはトップ営業マン」

最近は、大卒の就職事情がバブル期のように良くなっているという。大手の銀行では、今年も2000人以上の新卒採用を行っている。私が顧問をしているベンチャー企業各社も新卒採用は年間通じていつも会議の議題となっている。すでに上場しているベンチャー企業は、常に2年先の新卒採用面接に力を入れている。

いつの世も、どの会社も仕事が出来そうで頭のいいパワフルな人材は"青田買い"をしてでも欲しいのである。そして、若手ベンチャー企業の活躍で"十年後の人生モデル"としてのベンチャー起業家社長に弟子入り志願する就職の仕方も増えてきているようである。確かに、経営者でかつヤングエグゼクティブのスターが各業界に広がってきているので、人物像の目標設定がしやすい風潮になっていることも事実であろう。

新卒生の履歴書に添付する自己アピールとレポートの内容を見てみると、社会問題はじめ、いろいろなデータまで織り交ぜてぎっしりと「自分が就職したい理由と理論」が記されていて驚いている。私たちの新卒時代の事を考えると、就職は本当に「自己アピールの戦略的頭脳プレー」勝負ということがよくわかるし、昔でよかったと思う。

すでに新卒予定の学生には有名になっている会社で「ワイキューブ」「ベンチャーオンライン」などベンチャーの就職に特化したベンチャー企業が多く出てきて活躍している。ベンチャーの社長に会わせたり、講演を企画しやすい利点とベンチャーの可能性を人生の可能性とリンクさせてイメージさせるのも得意とするのである。

会社の社員も若く元気でオフィスも新しくかっこいいというアピールもいい武器になっている。当然、私も若い学生たちにはベンチャー企業への就職を勧める。その理由の一番目としては単純なことだが、「社長を観察できる」ということである。

30代、40代の社長に事業の立ち上げからの苦労や達成感や夢を聞き、今後の会社と人間の成長を共有出来るのはすごく人生の役に立つ。大会社に入って社長に直々に指導を仰ぐことは少ないし、責任力とリーダー力が大企業では短期間に養われにくい。

ベンチャーは常に新しい分野にも業界の枠を越えてチャレンジすることも多いので、新しいリーダーとして事業部を任されることも多い。また、一歩進んで社内ベンチャーとしての子会社社長就任の可能性も多くある。そして、その子会社が注目を浴びて株式上場していくケースも最近は出てきている。

先日、コンサルタント会社出身の藤井徳樹社長が7年前に興したベンチャーで東京の「株式会社インターンシップ総合研究所」という会社を訪ねたら、学生向けの社内ポスターに「稼げる社会人になろう」と大きく書いてあった。

「気づき」と「体験」をキーワードに学生と企業をお見合いマッチングさせるベンチャー企業ならではのコピーだが、このポスターの「稼げる」の言葉が心に残った。確かに、新入社員は営業職から入ることが多く、実績目標の数字を与えられスタートすることが多いし、学生目線の社会人イメージもそうであろう。

「稼ぐ」ことは会社も自分も成長していくことやプライドをもって社会人でいることも意味する。短期間に稼いできて延びてきたベンチャー起業家は、やはり会社をアピールする即戦力営業マンとしての自分の分身を求める。自分自身がまだまだ、会社自身を売り込む営業マンだからなのである。

ニッチなビジネスモデルや商品を武器にアピールし続けたベンチャー社長はおそらく引退するまで営業マンであろうと思う。

株式公開前後は、証券会社や監査法人に重箱の隅をつつくように質問責めに会う。例えて言うなら野球の千本ノックのようである。会社のことはもちろん、業界のことや心構え、方針、将来の計画など全て完全に答えなければならない。

特に上場後は、プロの投資家相手にパフォーマンスと説得力を持って話さなければならないのである。会社一番のベンチャー企業の営業マンはやはり社長自身である。

先日、私が主催したベンチャー起業家の食事会では、脱サラ前の話しで盛り上がった。多種多様の業界のベンチャーだが、やはり皆、一人残らず、元トップ営業マンだったのである。そして、それぞれ当時の仕事の工夫や苦労した武勇伝でも話が盛り上がった。

新しい会社や商品、ビジネスモデルを得たら自己アピールにストーリー性をつけて演出し訴え続ける「永遠のトップ営業マン=ベンチャー起業家」なのだろう。ベンチャー企業を興して成功させるには、まず、第一ステージとして、初めて就職した会社で「稼げる」営業マンになることが登竜門かもしれない。

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