コラム

ビジネス最前線

第21回 「ベンチャーのミッションパワー」

北海道旭川市にある日本最北の「旭山動物園」は、ベンチャー魂あふれる成功事例でしょう。2006年4月からの年間入園者数は今年の3月25日でついに300万人を越え、日本の動物園の中では、上野動物園(320万人)に次ぐ第2位の記録となりました。

昨年のピーク時の6月から9月までの月間入園者数だけで見れば1位になっていますし、昨年度年間200万人からは前期比50%アップで日本一は目の前でしょう。

これほど人気のある旭山動物園ですが、実は10年前の1996年には年間入園者数が26万人まで落ち込み閉園の声もあがりました。エキノコックス症という感染症で園内の動物が死んで一時閉園したこともあり、入園者数が激変したのです。

それから10年経過した2006年、入園者数は10倍以上となりました。

冬はマイナス40度になるという立地条件を考えると、奇跡の成果だと思いませんか。

奇跡を起こしたキーワードは「行動展示」でした。例えば、ペンギンたちの習性を活かして客の通る道を団体で散歩させます。ヒョウの檻は空中まで伸びており、寝ているヒョウを客は下から見ることができます。オランウータンの森では、オランウータンが上空十七メートルにあるロープを片手でぶらさがりながら移動していきます。

「あざらし館」ではアザラシが透明の円柱トンネル(マリンウェイ)の中を泳いでいく姿を本当に間近で見られます。入園者が身近で動物たちの自然な行動を観察できるように工夫を凝らしたのです。動物の生態に即した展示方法なので、動物たちはイキイキしていますから、入園者も楽しく観覧することができます。おそらく、動物たちもストレスが無く、逆に人間を観察しているのでしょう。

旭山動物園は旭川市が経営している動物園で、飼育員は公務員です。彼らは、動物に対する強い愛情と動物園への愛着があり、動物園を存続させるための努力を惜しまず、その思いが今の旭山動物園を造ったのです。

閉園という危機を迎え、原点に戻って理想の動物園を思い描いたことが、成功へのきっかけとなりました。理想の動物園を考えて皆で議論したこと、それをイメージとして絵に描いたこと、自分たちで展示施設を設計したことが成功の理由です。

理想について考えることは誰でもできることですが、なかなか継続して実行できません。仕事を行う組織は、理想の最終形を常に皆で考え、長期的な目標計画を立案・実行することを忘れてはなりません。

今では、多くのビジネスマンが旭山動物園を訪れており、会社経営やビジネスの参考にするほどになりました。旭山動物園は、テレビでも何度か紹介されるほど有名になり、他の動物園もマネをしていますが、同じような人気と成果を得ることは出来ません。

何故なら、旭山動物園のベースにある入園者へのサービス精神や動物たちへ愛情、そして「旭山動物園のミッションパワー」をマネすることが難しいからでしょう。

閉園に追い詰められた旭山動物園の飼育員にとって、よりよい動物園にすることは切実な問題でした。それが、他には見られないような理想の動物園しかないという「ミッションパワー」に発展したのです。

それは高校野球の優勝チームに伝統校が多い事と共通しています。やはり、伝統校には優勝に対する心構えが継承されており、チーム内に優勝するミッションパワーが出来上がっています。

理想を語るとき、「そんなことは無理だ」「出来るわけがない」「考えたって無駄だ」という声が聞こえるかもしれませんが、そこで立ち止まってはいけません。ある意味、理想を追うということは、怖いモノ知らずであることです。

例えば、ベンチャー企業の社長が怖いモノ知らずで新事業に立ち上がるのは、自分の理想を実現するためです。その業界の常識を無視して理想に真っ直ぐ向かっていくので、業界の常識を破ることになり、周囲を驚かすことになります。ですが、理想のサービスを提供しようとしていますから、ユーザーは歓迎します。

だからこそ、大きなチャンスと成果が訪れるのです。理想とミッションパワーは人と組織を動かす両輪ですから、常に皆で考え、それを確認しながら進むことが成功への近道なのです。

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