コラム

ビジネス最前線

第36回 「成功への洞察力」

先日、私の誕生会を関西の芦屋という閑静な高級住宅街の中の素敵なゲストハウス・レストランで催して頂きました。そして、この暑い夏本番の場所に、東京の有名パティシエ作成の誕生日ケーキが届いていたのです。8角形の箱の中には有名パティシエ店オリジナルの梱包とカードがあり、なんと中を開けると透明のプラスティックのカプセルでケーキが形が崩れないように覆われていました。

この東京有名パティシエ店ケーキが全国に宅配できるビジネスモデルは、ミューチュアル東京(株)の宮林社長が考案・運営しています。この会社は、東京での私の定例交流勉強会に、IT社長として参加頂いてから知った若いベンチャー企業ですが、日本初の洋菓子専門のショッピングサイト『デリケーキ』には正直驚かされました。

きっかけは、数年前の自身の体験からで、新潟の友人が現地特産のお米を結婚祝いに贈ってくれたお返しに「東京の有名店のケーキが食べたい。」と言われてニーズを見出したということです。

全国に有名な飲食店やお店の情報は、毎日のようにテレビで東京中心にレポートされたり、有名人オススメ店が雑誌に載っていたり、メディア情報を見聞きしない日は無いでしょう。そして、必然的に東京の有名店ケーキはブランドなのです。「これだ。」と思ってすぐに実行したのは、ケーキが崩れないダンボールを開発していた会社を見つけての独占契約だったそうです。しかし、一番重要かつ大変なのが有名パティシエ店との契約、つまりオーナーの説得でした。

当然、インターネットからケーキが売れれば利益は会社にも入り、店も店外で売れる訳で両者ウィンウィンの筈ですが、そう簡単にはいかなかったのも・・・当然でした。クール便で送るとはいえ、こだわりの味の劣化やイチゴやクリームなどの品質保持を考えると洋菓子店オーナーも躊躇するでしょうし、実際、最初の50件を営業して4件がやっとの契約だったそうです。

ここで大切なのはビジネスパートナーとの「真摯な理念とコンセプト」のコンセンサスなのです。「とりあえず儲かりそうだからやってみよう。」とかでは、成功するまでやり遂げられないのがベンチャーの原理原則なのです。私の見てきた限り、初動の精神、つまりお客の立場からの思いや洞察力が減退していけば焦点がぼやけてビジネスも完遂しないことが多いのです。当然、有名でも美味しくないお店とは理念として契約せず、ケーキ店からショッピングモールへの提携オファーも今では9割近くお断りしているそうです。

以前に、私のテレビ番組のゲストで登場しましたオイシックス(株)もベンチャー業界では数々の賞を受け伸びている優秀なインターネット食材販売会社です。今では産地直送の野菜から卵、牛乳まで2,300種類を超える食材をBtoCでお客様に24時間営業しているのです。旬のこだわり野菜などを詰めた「おためしセット」はとても評判良く、ファンとリピーター獲得に活躍しています。「ネットベンチャーの多くはアメリカのマネをしてきましたが、アメリカでの成功事例の無い食材ネット販売は教材なしの無我夢中で失敗ばかりだった・・・だからやりがいもあった。」という高島社長の言葉が印象的でした。お客様からネット受注後の農家への発注は野菜などの在庫が土や木にあり、不良在庫なしで便利な強みなのです。

しかし、東大卒エリートでもある高島社長の初めの苦労も、農家が何も売ってくれなかったということでした。ネット販売が理解できない農家を説得するのは、足繁く通い人間関係を作るしかなかったらしく、一緒に酒を飲み、ある時は魚の仕入先獲得のために漁船にも乗ったそうです。そして今では1,000件以上の農家等と契約しているのです。“農家の皆さんの家族が食べるのと同じ安心安全で本当に美味しい食材を全国中探し歩いてネットの向こう側のお客様に提供し喜んでいただく”のを理念とする『感動食品専門スーパー』がビジネスモデルなのです。感動はお客様とともに提供企業側もするのでしょう。

洞察とは、物事を通してその本質や奥底にあるものを見抜き見通すことだそうです。
日常の何気ない疑問や要望が一人の理念を持った思いで完遂したとき、素晴らしい社会貢献ビジネスモデルになる可能性をインターネットは秘めています。

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