コラム

ビジネス最前線

第37回 「成功への原点回帰」

私は仕事で多くの会社に出向き会議に参加します。そして、以前は総評として最後に意見を言うことが多かったのですが、最近は各役員や担当者の発表や話の中で「それは何故?」「自分の意見・意思?経緯は?」などと質問するのです。ここ数年、会社の商品動向や経営方向は、流行や "うまみがありそう" でつい行動してしまい失敗することがいかに多いかを体験してきたからです。情報が多く氾濫して消費者動向が目まぐるしく変化する今の時代に必要なのは柔軟な考えや行動法よりもやはり "理念志向" という原点回帰なのです。

大阪の羽曳野市に本部を置く "アトム電器チェーン" をご存知ですか? 郊外の大手電気店が勝ち組としてここ数年、毎日のテレビCMとチラシで安さを競い合い、実際私たちも家電製品は近所の電器店を見ずして車で出かけて大手で買い物をしています。が、このアトムチェーンは地域の中小電器店が巻き返しを図っているのです。近所の電器店といえば、"1つのメーカーのみ" "高い" "展示品種少ない" が普通なのですが、この本部は、全国の街中電器店を加盟チェーン化し(月額5万程・現在500店以上)、各メーカーと一括仕入れ交渉で安く仕入れ各電器店に卸すというビジネスモデルなのです。

これを仕掛けて成長させている井坂社長の原点はやはり自身が地域の電器店なのです。地域の家族が顧客であり家まであがり御用聞きのように何かと細かいサービスをしてきた経験と顧客目線が巻き返した事業なのでしょう。例えば、エアコンは安いだけでなくすぐに設置に駆け付け工賃も別途利益になります。全メーカー品が安く揃い、設置・修理・メンテナンスが行き届けば大手に負けないどころか、大手の電器品宣伝媒体を逆に活用できる "21世紀型電器店" だということです。

思えば大阪は、「松下電器」創業の都市です。私の幼い頃は、母親が近所の松下電器のお店で常に買い物をしていてナショナル製品以外は買えない、裏切れない空気がありました。電器製品に詳しくも無い母が「東芝は唯一の特許で4枚羽根扇風機やけど3枚羽根の松下をしかたなく買うのや!」と言っていました。松下幸之助氏が大阪という地域全体のカリスマで信頼のおけるイメージだったのと顧客はまるで信者であり応援団のようだったのです。

松下幸之助伝説には数限りなく美談や戒めがあります。
「水道水のように電器製品を豊かに安く生産提供し人々に幸福をもたらす」・・という松下の水道哲学が原理原則であり、「一軒のお得意様を守ることが百軒のお客様を増やす」「相手に喜びや安心を与える」「サービスとは正しい礼儀である」でナショナルショップを全国に展開し原点と本質を忘れない精神が「経営の神様」と今でも慕われる所以でしょう。
幸之助氏は新聞記者からの質問で「松下電器の成功の秘訣は?」と聞かれた時に、「雨が降れば傘をさす、それが秘訣です。」と答えたといいます。当たり前の事を適在適所行うことが大切で「天地自然の理」が原点だということです。
最近のベンチャー企業の倒産や衰退を見ていても本業以外に投資・着手し色気を出して顧客と創業の原点を忘れての必然で残念な結果かもしれません。

松下幸之助氏の言葉の原点ともいえる筆文字の標語で有名な『素直』の中に次のメッセージがあります。「素直な心になりましょう。素直な心はあなたを強く正しく聡明にいたします。」というものです。
これは、先入観や利害・知識・感情などにとらわれず物事の本質をありのままに見る心のことだそうです。
それによって、自身の成すべき事や成すべき事でないことを見極め常に自分らしい原点に帰りながら心豊かな人生を活かし続けるのでしょう。「素直な心」にいつも原点回帰できるように心掛けましょう。

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